これは、8年前の出来事です。
TVの音が随分高いなぁと気になっていたが、隣の犬の鳴き声で、時々聞こえないことがあるので、高くしているのかと、注意はしなかった。
呼んでもすぐに反応が無かったり「歳も歳出し仕方がないよね」と話していた。
ある日、マッチの棒で耳を掻いていた。「お義母さん、耳痒いんですか?👂」「そうなの、掻き出そうと思っているんだけどね、ここのマッチの棒短いし、すぐに折れるのよ」確かに、停電の時マッチを買って来たが、持つ所が、紙をチョット厚くした程度で、オマケに短い。マッチとしても使いづらいマッチだったが………「お義母さん!マッチの棒で耳垢取ろうとしてたんですか?」
怖くて『耳掻き』を使ったことがないという。「昔から、マッチの棒で、新聞紙を敷いて、入り口付近にあるのを、掻き出して落とすの。余り詰まって病院に行った事もあるの!」
見てみると、これは聞こえないはず。ビッシリ詰まっていた。
子供の耳掻きをした時のように、私が座った窪みに義母の頭をのせて、始めた。耳掻き大好きな私の腕がなる。
隙間がない程に詰まった垢を縁の方から静かに剥がしていった。砕いて取るのは簡単だが、醍醐味が半減する。
こんなの見た事無いと思うほど大きな垢を静かにチッシュにのせて見せた。「あら〜よくこんなデッカいのが入っていたわね」本人もびっくりしてやさしく包んで、「◯息子に見せよう!」耳垢見せられてもなぁ…と思ったが、まっ! そこは親子。気にすむように。逆の耳も👂ひかず劣らず。チッシュにまとめ大事に持っていた。
残りの細かい部分や縁をやさしく撫でいたら「上手ずだね〜気持ちいい!気持ちいい」を連発。その内、声が途切れ途切れになり、しまいには、寝息が聞こえて来た。
気持ちが良いのは分かりますがお義母さん。足が痺れてきました。足を動かすと「本当に上手だね〜き、も、ち、………」
しばらく我慢していたが、足がすでに感覚がなくなってきた。「お義母さん終わりましたよー」耳元で囁いた。「アラ〜ありがとう❣️気持ちよかった」ヨッコラショと起き上がった。
その時、息子に見せると大事に持っていたチッシュの包みを “ぎゅっと”握りしめた。
広げて見ると、ポテトチップスを食べ終えた袋の、そこにわびしく残っているカスのような無残な姿に。
「コレを見せられてもねぇ」という事で話だけになってしまった。夕食どきの話題には相応しくなかったが、興奮して教える義母に、夫は「…ふーん」「時々、見て取ってやってくれ!」
今思い返しても、笑える。足の痺れも懐かしい。
あれから、8年もたったんだねぇ…お義母さん。
